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  中学校の講話
 
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「目尻から水分」のわけ


 コンクールやコンサートで、皆さんが奏でる音色に浸っていると目尻から水分が「ぽたり」。「いい歳して」と笑われるのが怖くて、拭うのにも細心の注意が必要です。

 レコード収集家でもあった宮沢賢治が、近所の農家の子どもたちを招いてベートーベンの曲を聴かせたところ、思いがけず全員が涙を流したというエピソードを聞いたことがあります。ヨーロッパの文化とは無縁の生活を送っていた100年前の子どもたちの涙は、よい音色が人の心を惹きつけ、揺さぶることの証だと思います。

 私にも同じような経験があります。20歳になったばかりの頃、3週間かけて西ヨーロッパの国々を回りました。イタリアでのことです。教会に何気なく足を踏み入れた途端、パイプオルガンの音色に包まれた私は、全く動くことができなくなり、目には涙が。当然のことながら私とキリスト教との間に今も昔も縁はありません。

 ただ、よい音色が人の心を惹きつけ、揺さぶるのは事実ですが、近頃の「ぽたり」の原因は、それだけではないような気がしています。放課後になると、同じフレーズに幾度も幾度も繰り返し挑戦する、真摯な音色が校長室まで届いてきます。何としても自分を伸ばそうという思いも一緒に。

 また、私は常々全校の皆さんに「規律ある集団」となることを求めていますが、目標が明確で、やすきに流れることを互いに戒め、いますべきことに集中しようと努めている吹奏楽部がめざしているのは、まさに「規律ある集団」ではないかと感じています。

 加えて、中学生であっても地域の一員であることを常に意識し、貢献してほしいとの願いが私にはあるのですが、吹奏楽部員は、地域の行事や祭典への出演をとおして、この願いを現実のものにしていると感謝しています。

 このように、吹奏楽部員一人ひとりの意識の高さ、積み重ねている努力、そして吹奏楽部が果たしている業績等が常に頭にあるため、皆さんが奏でる音色に浸る度に「ぽたり」となっているのではないかと考えています。

 何かと忙しい年の瀬です。皆さんの演奏によって、集まってくださった方々が一時でも慌ただしさを忘れてくださったら嬉しいですね。私は、普段にも増して細心の注意を払いつつ皆さんの音色を楽しみたいと考えています。

(大谷正敏)



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