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中学校の講話

 


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32ヵ国放浪の旅



 

 私は旅が好きです。夏休みが近づくと、ムズムズ、そわそわしてきて、いても立ってもいられなくなります。そこで今日は、若かりし頃の一人旅の話をします。

 まずはトルコ。シュリーマンの『古代への情熱』に憧れて、トロイやエフェソスの遺跡を見て回りました。気温は45℃。鼻から入る熱風と焦げるような日差しに私は気を失いそうになりました。辺りに自動販売機などはなく、ホテルへ帰る途中、やっと一軒の小さなお店にたどり着きました。そこにはおばさんが一人。ふらふらしている私をかわいそうに思ったのでしょう、自分が食べていたお昼ご飯をスプーンですくって私の口に入れてくれたのです。卵とピーマンの炒め物でした。そして、その作り方まで手振り身振りで教えてくれました。見ず知らずの外国人に、こんなにも親切にしてくれたことに私は深く感動しました。

 インドでは、リキシャーと呼ばれる人力車のような乗り物をよく利用しました。運転手さんは背中に汗をびっしょりかきながら、市内観光だけでなく様々な旅のトラブルにも立ち会ってくれました。お礼にお茶でもごちそうしようと、滞在していたホテルのロビーに向かった時のことです。ふと気づくと運転手さんがいません。不思議に思い振り返ると、回転扉の向こうでドアマンたちに腕を押さえられていました。カースト制度の現実を突きつけられた瞬間でした。

 クロアチアのザグレブという町では、みすぼらしい身なりの子どもたちに取り囲まれてしまいました。彼らは何やら口々に叫んでいます。「ジャポネスカラテ」「ジャポネスカラテ」。空手をやってくれと言っているのかな? と勝手に解釈し、空手の型のようなものを披露してあげました。すると子どもたちは大喜び。いつの間にやら、彼らの親らしき大人たちまで集まってきて、何語か分からない言葉で話しかけてきます。どうやら、彼らはルーマニアの革命から逃れてきた難民のようでした。一体彼らはどこへ向かうのか。幸せを祈らずにはいられませんでした。

 旅をとおして、人々の善意に出会ったり、想像を超えるものに出会ったりしてきました。そして、いつも思うのは、世界にはいろいろな思いを抱えて生きている人たちがいて、その一人一人には大切な暮らしがあるということです。私たちは、歴史や文化、習慣など、様々な違いを超えて共存・共生できる道をさがし、誰にとってもかけがえのない暮らしや人生を大切に守っていかなければならないと思います。

(和田 節子)

 

*参考
・シュリーマン著、村田数之亮訳『古代への情熱 ―シュリーマン自伝』岩波文庫、1954年


先週の中学校の講話

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