[本書の概要]
人々の〈心の危機〉が叫ばれています。
とくに学校現場では、社会的な道徳退廃への危機感から、〈心の教育〉のよりいっそうの充実が求められています。国の施策として「心のノート」が全児童・生徒に配布され、またスクールカウンセラーの設置が急がれています。
しかし、それで状況は改善されるのでしょうか?
〈心の教育〉をはじめとする現在の施策は、子どもの〈心〉に問題の原因を見出し、適応するよう処置しようとするものです。しかしそれは、根本的な原因であるかもしれない社会状況や学校環境の改善にはつながりません。対症療法に過ぎず、問題のある状況・環境は温存されます。
なぜ、現代において〈心〉がこれほど重要視されるのか。〈心理主義化〉という流れをふまえ、子どもの〈心の危機〉が叫ばれ出した理由、〈心の教育〉の実相、児童・生徒理解という考え方、〈心の専門家〉の実際的な役割と限界、自分探し・個性尊重など学校においてキーワードとされる論点を中心に批判的に問い直し、人と人との新たなかかわりを探ります。 |