本書は「教育の私事化と公教育の解体」と題しているが、「教育の私事化」とは本来個人の思想や信条の自由を保障するために存在するはずの私教育が、個人や企業の利益追求のための教育に変わることを意味する。また、「公教育の解体」とは教育がもっぱら個人やその家族のためにのみ存在するようになった結果、国民や住民の共同育成を目指してきた公教育のシステムが融解しつつあることをさす。
「教育の私事化と公教育の解体」という過程が現実に進行しつつある今日、事態はより深刻であり、いっそう真剣な取り組みが必要とされている。本書は発足以来の大変革期に入ったと思われる公教育制度について、三つ(①教育の私事化と公教育の解体、②公教育の中核となっている義務教育の融解がどこまで進んでいるのか、③「教育の私事化」が私学教育にどう影響を及ぼしているか)に焦点を絞って究明することを課題としている。(「はしがき」より)