[本書の目次]
はじめに 教え子からの手紙 不眠不休の末に/幸せになる力を育む教育現場で/先生死ぬかも/事実確認すらままならない/「失敗」から学んでいるか/働き方改革の形骸化、残業の「見えない化」にあらがう/本書の構成/用語の説明
第1章 教師の過労死等の現実 採用2年目、26歳の若すぎる過労死/相次ぐ、熱血教師の過労死/26時まで仕事、小学校の先生も次々と倒れていく/自ら命を絶つほど、追い詰められていく現実/3人の新任教諭の自死に共通すること/特別支援学校でも/100件近い、教師の過労死等の事案を収集、分析/地方公務員の中で、教師の過労死は突出して多い。/毎年350~500人の先生が亡くなっている
第2章 教師の過労死等は何に影響するのか 電通事件より過酷な長時間労働の蔓延/「私は大丈夫」とは言えない/残業麻痺する教育現場/毎年約5000人が精神疾患で休職/20代、30代の病休も増加/過労死等の家族への影響/二度「死亡宣告」を受けたような心境/子どもたちの一生への影響/いい授業をしよう、子どものSOSをキャッチしようと言うのは酷
第3章 なぜ、学校と教育行政は過労死、過労自死を繰り返すのか 兼務に次ぐ兼務のなかで/酷似する現実/勤務時間外の教材研究や行事の準備は公務なのか?/約2ヵ月に休みは1日しかなかった/命を削る修学旅行/過労死ラインの倍以上の負荷の末に/休みもなく、他の人の3倍以上仕事の末に/こんなことは私で終わらせてほしい/教師の過労死等が繰り返し起きてしまうのは、なぜか? 〈1〉実現手段を考慮しない教育政策/先生たちは、なぜ、こんなにも忙しいのか?/子どもと向き合い過ぎているから、とても忙しい/勤務時間中に授業準備できない/小学校が一層過酷になる構造的な問題/高校教師と小学校教師の“格差”/忙しさや授業準備時間がまったく考慮されていない教員定数の算定/個別最適な学びを進める上でも問題の多い算定式 〈2〉 “子どものため”という自縄自縛/児童生徒のためにやめられない/本当に子どものためになっているのか?/高校の多忙の内訳/子どものこと最優先で、自分たちのことには関心が薄い/なぜ、人気で業績もよい会社で過労死等が起きるのか/学校はブラック・アンド・ホワイト企業の特徴と瓜二つ 〈3〉 集団無責任体制、組織マネジメントの欠如/誰も調査しない、責任も取らない/みんな、他人事?/必要なのは、研修管理より労務管理 〈4〉 チェックと是正指導の機能不全/労働安全衛生体制の整備が急務/市区町村立学校の労働基準監督を担うのは首長 〈5〉 過ちに向き合わない、学習しない組織体質/お気の毒様で幕引き? 実態把握もない、検証もしない/同僚の死を悲しむよりも、学校を回すことを優先/失敗から学ぶ組織、学ばない組織/学校の働き方改革は進んだか
第4章 いま、何が必要か―識者との意見交換を通じて ◇過労死事案から考える、過労死等防止への対策…松丸 正(弁護士) ◇過労死リスクの高い教師の働き方をどう変えるか…高橋正也(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所・過労死等防止調査研究センターセンター長)・吉川徹(同センター統括研究員) ◇教師のメンタルヘルスを守る仕組みづくり…大石智(北里大学医学部講師)
第5章 教師の過労死等を二度と繰り返さないために 教師の過労死等をゼロにする 〈1〉教職員の健康・ウェルビーイングを大切にする制度・政策への転換 1-1 教職員の健康・ウェルビーイングを働き方改革の主目的に置く/過労死等の防止を明記しているのは、たった1県/各県のプランの問題点/1-2 学習指導要領や入試で求められる学習内容の精選、部活動の地域展開など、児童生徒と教員の大幅な負担軽減/部活動の地域移行で留意すること/1-3 義務教育標準法を改正し、教員の授業負担軽減や少人数学級を推進/1-4 教員以外にケアやコンサルテーションを専門とするスタッフを増員/1-5 新採教員に学級担任や部活動顧問を課さない、研修充実期間を設ける/1-6 教員不足解消に向けた抜本的な対策の実行 〈2〉子どものためにも、“自分のため”を大切にできる学校職場づくり 2-1 校内研修等を活用した批判的リフレクションの推進/「あれもこれも大事」という発想では、本当に大事なことを大切にできない/2-2 教職員の健康を害する修学旅行や研究授業は、ストップする/2-3 勤務間インターバル制度の導入や有休取得最低日数の義務化により、学校から離れる時間をつくる/眠くてよい授業やケアができるわけがない/健康とリフレッシュ、視野を広げるためにも、しっかり休む/2-3 メンタル不調への早めの相談、支援を可能とする保健師らによるサポート体制の構築 〈3〉教職員の健康管理に関する校長責任の明確化、その実効性を担保する仕組みの構築 3-1 校長への登用、研修、人事評価における労働安全衛生の重視/3-2 校長が適切な対応を取らない場合の救済策を併設/3-3 ストレスチェックの集団分析や部下評価による校長育成の推進 〈4〉地方公務員制度を改革し、労働基準監督が機能する体制へ 4-1 地方公務員についても労基署が監督、指導できる体制への法改正/4-2 小規模校においても衛生委員会の設置を推進 〈5〉過労死等から学び、二度と繰り返さない学校、教育行政に 5-1 教師の過労死等に関わる検証報告書の作成と全国的な共有/先行指標に注目せよ/5-2 教職員の過重労働や精神的な負荷、ハラスメントに関する相談・支援機関の設置/5-3 教員養成ならびに現職教員研修等における過労死等防止授業の導入
おわりに |